眠りと背骨/頭

身体のしくみ

整体を受けた方から時々、「ぐっすりと眠った後のような感覚です」という感想をいただきます。

わずか数十分の整体の間、実際に眠ってしまう人もいるのですが、それでも眠っているのはほんの数分のことです。
それでも、終わって起き上がってもらった時に、そのような感覚になっているというのです。

これにはちゃんとした理由があります。

人によって、眠る時の姿勢は仰向け、うつ伏せ、横向きなど様々です。
仰向けの方のほうが圧倒的に多いですが、いずれの場合も、寝ている時というのは頭を支えていません。

起きている時というのは、立っている時はもちろん、座っている時でも、重たい頭を常時支えています。
その頭を支える中心的な役割をしているのが背骨です。厳密に言えば骨そのものというよりは、その背骨を支えている筋肉です。
(話がややこしくなるので、ここではそれらを含めて「背骨」という言い方をしたいと思います。)

つまり起きている間じゅう、背骨はある程度の緊張状態にあります。
人間の頭というのは案外重たいものですが、その頭を真上にして、何時間も連続で支えていなければなりません。

もちろん無意識のうちにバランスをとって支えているわけですから、「大変だなぁ」「頭って重たいな」なんて意識しながら支えている人はいませんが、それでも無意識下でそれだけの働きをしています。

さらに、背骨は内臓や手足など、体の様々な身体の部位との信号のやりとりをしています。
たとえば腕をよく使うような仕事をしている人は、腕に関連する背骨が緊張します。

食べ過ぎれば、胃腸に関連する背骨が緊張します。

1日の間に、そのような身体各所の疲れ具合に応じて、背骨は反応しています。

さらに、背骨は頭を物理的に支えているだけではなく、頭の中で起こっているの様々な状況に反応しています。
簡単にいえば、頭が緊張すれば背骨も緊張します。

仕事中に強いプレッシャーを感じたり、人間関係のいざこざに巻き込まれて心が疲弊したり、人の目ばかり気にしていて緊張していたり、という様々な反応に応じて背骨も緊張します。

こうした状態は実際に背骨を調べてみると、骨の位置の変動その周辺の筋肉の硬直などとして現れています。
整体の施術の際にはそれをほぐしていくという作業をするわけです。

ただ本来、それが自然にしっかり取れるタイミングというのが、まさにしっかりと良質な睡眠をとった後なのです。

先ほどお話しした通り、睡眠時は頭を支えるという働きが必要ありません。
手足や様々な器官も、起きている時よりは休んでいます。

なので、ぐっすりと背骨も休める時間であり、回復の時間なのです。

睡眠不足や睡眠の質が悪いというのが、体にどれだけ悪影響なのかということはお分かりいただけるかと思います。
しっかりと休めていないと、疲れが残った背骨でまた1日、また1日と頭を支え、体のあちこちの刺激の影響を受け続けなければならないのです。

しっかりと休めない、眠れないという人は、実は既に背骨に疲労が溜まりすぎている状態である場合が多いです。

あるいは、頭の中が常に忙しい人。
これは思考の癖のようなものですから、たとえば先のことばかり考えすぎない、ネガティブに物事を捉えすぎない、といったように思考のパターンを変えていくことも必要です。

いずれにしても、そういう方は既に背骨がカチカチに固まっている状態になっている可能性がありますから、それを人為的に解いていかなければなりません。
効果的な体操などでももちろんいいですが、整体を受けるというのにはそう言った意味もあります。

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