産後の不調はなぜ起こる?

「出産したので、骨盤調整をお願いします!」
という依頼が時々あります。

最近ではかなり減りましたが、「野口整体の骨盤矯正法と、産褥体操をお願いします」という依頼がくることもありました。
「産後は骨盤が開いているから、矯正が必要だ」という情報が出回っているこのごろですから、こういう依頼も不思議ではありません。

しかし、まるで「5000キロ走行したので、エンジンオイルの交換をお願いします」のようなノリで言われることが多く、それには少々違和感を感じてしまいます。

産後の骨盤は、確かに形状としては開いているわけですが、着目すべきはその開きというより、腰の力だと当塾では考えています。

産後しばらくは、腰の力が入らないようになっています。

もちろん経験者の方は、その感じがよくおわかりでしょう。

「骨盤が開いている感じ」というのではなくて、「腰が抜けているような、体が安定しないような感じ」だと思います。
生まれたての子鹿のような・・・というのは大げさかもしれませんが(笑)
そんな腰の状態は、日々改善してはいくものの、当分の間続きます。

最初の数日は特にフニャフニャですが、その後も腰に締まりがない感じがさらに数週間~数ヶ月続きます。
こういう時期に、骨盤を締めるように押し付けても、あるいはベルトでしめつけておいても、その効果は保ちません。
そればかりか、余計な刺激を加えることで、本来自然に進行していく腰の力の回復が邪魔され、ストップしてしまう場合も多くあります。
この時期にやたらと歩き回ってもそうなります。

その結果いつまでも腰に力が入らなくなってしまい、太ももばかりが太くなったり、背中で体を支えるようになって背中が痛み出したりすることがあります。

子宮も締まらず、お腹もたるんだまま。

産後しばらくして腕が腱鞘炎のように痛くなる人もいますが、それも同じ理由で腰に力が入らず、腕の力ばかりで赤ちゃんを抱っこしたり、家事をしたりするようになるせいです。

また、授乳の期間中は母乳の分泌に関係する肩甲骨の間の背骨が過敏になります。
その背骨は腕を支える働きと重複している部分でもあり、そのために余計に腕の痛みが出やすいのです。

 

産後の腰の力の回復は、生まれてきた赤ちゃんの足腰の発育のプロセスと似ています。
もちろん、かかる時間は大きく違いますが…。

赤ちゃんは最初の数ヶ月、寝転がっているだけです。
だけどその間に呼吸器を中心とした臓器を発育させ、ある程度背骨を丈夫にし、準備が整った頃に足腰の発育をスタートさせます。

 

ずりばい、はいはいなどを自然に行うようになり、そして立ち上がります。

ところが、早く歩かせたいとか、足腰を丈夫に鍛えたいなどという親のエゴで、まだ立てない時期から無理に体を持ち上げ、練習をさせたとします。

すると、まだ力のない足を無理に使わされた赤ちゃんは、股関節の異常を引き起こしたり、まだ力のない背骨に負担をかけ、大きな歪みを作ってしまうことになります。

そのまま大きくなってしまった場合、その股関節や背骨を治すのはかなり困難です。

産後のお母さんも似たようなもので、最初のうちは、妊娠~出産のために疲れ果てた体をまず休めなければなりません。

だから本当は、あまり無理に動き回らず、休んでいた方がいいのです。

しかも同時に、自分の血液を母乳に作り替えるという、大変な作業を体の中で行っているのですから、余計に養生が必要です。
「お産は病気じゃないから」などと、精力的に動き回ることは不自然なのです。

早く足腰に力を付けて動き回ろうとすれば、赤ちゃんと同じように、股関節や背骨を痛めてしまうことになります。

そればかりか、まだ回復していない呼吸器、腎臓などの臓器にも異常が出てきます。
産後に息苦しくなったり、肌が荒れたり、むくみが起こったり、いつまでも疲れが取れないという症状は、そうしたことが原因になって起こりやすいです。
また、体力を消耗している人でも、お母さんの体はなんとか頑張って母乳の分泌を優先しようとします。
だから頑張って栄養をとったり、よく休むように心がけても、なかなか疲れが取れません。

さらに適切な時期に断乳ができず、授乳期間が長引けば長引くほど、体力の消耗も激しくなります。

また、離乳食を始めるのが遅いと、いつまでも母乳の量が減らず、体力がどんどん消耗していきます。

まだ断乳の時期でもないのに母乳が出なくなってしまう場合もありますが、これはついに体力が追いつかなくなったひどい状況であるか、大きな精神的ストレスがかかっている場合です。

いずれにしても、産後は無理をせず、体の自然な回復に合わせて、腰の力を徐々に取り戻していくことが大事です。

といっても現実的には、産後にいつまでも休んでいられるわけでもなく、全く動かずにいられるはずもありません。

できるだけ事前に家族の協力も依頼し、最低限の負担ですむような努力も必要かと思います。
(これは精神的なストレスを出来るだけ避けるためにも必要なことと思います。)
その上で、必要に応じて、整体などのケアを活用して頂きたいと思います。
産後の体操や整体は、自然な経過の補助を行うものであって、「開いているから締める」とか、「疲れているから揉みほぐす」「力が弱っているからスクワットで鍛える」というような乱暴なものではありません。

引き締まろうという体内の自然な「波」に乗ること、必要なピンポイントに的を絞ること、体の内側の力を誘導すること、等が大事になってきます。

また、整体を受けたからそれですぐ引き締まる、というものでもありません。

「産後の体」を卒業するには、しかるべき時期を待つ必要があります。
その時期を遅らせないために、卒業までの日々を正しく過ごすための手助けが整体であると捉えて頂きたいと思います。

産後の整体(個人指導)については、産後3週間からとさせて頂くことになります。
(以前から整体を受けている方の場合は、もう少し早めでも構いません。)

妊娠中の方で初めての方は、7ヶ月未満の時期に限らせて頂きます。
(重度の疾患がある場合はお断りさせて頂く場合もあります。

詳しくはホームページの案内をご覧下さい。