プラス・マイナス

ある人が、職場の上司に怒られたそうです。
だけどその人は、なぜ怒られたのかがよく分かっていない。

何だか理不尽な気もして、しばらくはモヤモヤしていたそうなんですが、何となくその上司が怒った理由を前向きに考えて、ようやく気が晴れたんだというんです。

で、その考えた理由というのが、「その頃、上司も疲れているようだったし、機嫌が悪かったんだろう、何か些細なことが気に障ったんだろう」というようなものだと言うんです。

だから気にすることはない、自分は自分で今までと変わらず、自分らしくいればいいんだと・・・。

しかも、そう考えてみると、疲れている上司に対して同情することもできるし、理由もなく怒ったことを許してあげることもできる・・・。
「プラス思考ってやっぱり素晴らしい!つまらないトラブルに頭を悩ませることもないし、他人の過ちを許せる心の大きさを養うこともできる!!」なんて、上から目線で悦に入っているご様子です。

 

だけど、「プラスになる」っていうことは、「今までの自分にないものを得られる」ということですよね。

今までの自分には見えなかったことが見えるようになる、ということです。
それは決して、今までの自分にとって都合のいい答えを導き出すということではないはずです。

「マイナスの出来事にも、きっとプラスの意味がある」なんていう考え方も流行っていますが、それは「怒られて、嫌な気分になった」というマイナスの出来事を、すぐにプラスに変換しようということではないはずです。

むしろ逆に、その嫌な気分にたっぷり浸ってみる。

落ち込んで、自己嫌悪に陥って、今まで培って来たつもりの「自信」なんていうものがいかに薄っぺらくて、「信念」なんていうものがいかにヤワなものだったか、そういうことに気づいてみる。
すると、その「自信」や「信念」という鎧で覆い隠していた自分のマイナスの部分が見えてくる・・・
もしかすると上司は、そういう部分をずっと見ていて、堪忍袋の緒が切れたのかもしれません。

それに気づいて初めて、「上司が怒ってくれたおかげで、本当の自分を顧みることができました」というプラス思考が・・・・

 

・・・実際には簡単に芽生えるものじゃないんですけどね。

まだまだ悔しさは残るけれど、まぁ、そういうことか、と。
計算上でも、マイナスにマイナスを掛ければプラスになるわけで・・・まぁ、こじつけのような話なんですが(汗)

 

近頃は安っぽいプラス思考や薄っぺらい信念、自信、自分らしい生き方・・・

そういうものが商品化され、気軽に手に入れられるようになっていますが、本当にプラスに転じるということは、そんなにお手軽なものではないと思うんですよね。