歯の食いしばりに頭部、そして全身への様々な影響

体と心全般

頭部(頭蓋骨)が全身に影響する

福井自然体健康塾では、頭部の調整を大変重要視しています。

過去の記事やSNSなどでも、頭の調整が全身に影響するということを何度か書いていますし、腰や背中の痛み、その他様々な身体の不調が、実は頭に起因しているというようなケースは多くあります。

頭といっても、普通、頭の骨は動きませんよね。
頭蓋骨が一枚の骨ではなくて、いくつかの骨が繋がって形をなしていることはご存知だと思いますが、それらは強くくっついているため、目に見えて形を変えるようなことはありません。

なので、頭の調整、頭の整体などと言われても、あまりピンとこないと思います。

でも実際は、頭の骨のつなぎ目も微妙に動いていて、その動きが様々な影響をもたらしています。

顎関節の歪み

しかし今回お話したいのは、頭の骨の中で最もよく動く部分、顎関節についてです。

顎関節は、非常によく動きます。

口の開け閉めを行う場所です。口の開け閉めは基本的に上下の動きですが、わずかに横にも動きます。
下顎を右、左へ少し動かすことはできますよね。
たとえば、ラクダの口の動きの物真似をイメージしてもらえばおわかりいただけるかと思います。

そして、よく人の顔を見てみると、ほとんどの方がわずかに口を歪ませています。
顎が左右どちらかに傾いていたり、口を開けた時に、左右の開き具合が微妙に違っていたりすることがわかるはずです。

つまりこれは、顎関節の歪みが起こっているということです。
この状態がひどくなっているのが、よく聞かれる「顎関節症」ですね。

顎関節の歪みや顎関節症の原因となるもの

ではこの歪みをまっすぐにすればいいのか、ということではなく、問題は歪みが発生するその理由です。

その歪みの原因こそが、「歯の食いしばり」です。
これはほとんどが無意識のうちに、のことなんですが、いつのまにか食いしばりが続いているせいで、歪みが生じているということです。

そしてその多くが眠っている間に(なので当然無意識です)なんですが、気づかないだけで、起きている間も普段から食いしばっている人もいます。

寝ている間に歯ぎしりをしている人というのも、要するに食いしばっているのです。

この歯ぎしりも、眠っている間のことですから、ほとんど自覚がありません。
しかし人の歯ぎしりの音を聞いたことがある人ならわかるかと思いますが、これは相当大きな音です。まるで金属を削っているかのような、激しい音がする場合もあります。

つまり、相当な力で食いしばっているということです。

歯ぎしりのせいで奥歯が削れてしまった、変形してしまったなんていう人も多いですね。

「食いしばり」の実態

通常、大人が思い切り噛む力というのが、50kg前後だと言われています。
これにも諸説あるのですが、だいたい大人一人分の体重と同じぐらいだと言えるのではないでしょうか。

さらに、これもまた諸説あるのですが、歯ぎしりをしている時や、無意識に食いしばっている時というのは、さらに3〜5倍上回る力がかかっている、という説もあるほどです。

仮に大人一人分の体重と同じである場合だとしても、要するに全体重をかけて顔を踏みつけられているのと同じことになります。

さらに数倍だとすると、3人がかり(もしくはそれ以上)で踏みつけられているのと同じということですね。
これはものすごい力です。これで歪まないはずがないですし、何らかの問題が起こらないはずがありません。

そして当然、その圧力は頭部だけでなく、全身に及ぶのも当然と考えられます。

食いしばりの原因

ではなぜ、無意識のうちに、そのような「食いしばり」をしてしまうのでしょうか?

その原因は非常に複雑なものがあるのですが、簡単に一言で言ってしまうと、「精神的なストレス」ということになります。

「ストレス」の一言ではあまりにも範囲が広すぎて抽象的ですが、わかりやすい言葉で言うとそういうことです。

私たちは日々の生活の中で、意識できるものもできないものも含め、様々な刺激を心に受けています。

実は頭で意識できていないもののほうが何倍も多いでしょう。

むしろ意識で「ストレスを受けたな」「今日はつらいな」と感じたもののほうが、意識できている分、意識的に除去したり、考え方を変えたりして解消しやすい面もあります。
(ただ実際は人間の心というのは複雑な多重構造みたいなものですから、意識できている部分のさらに奥に意識できていない部分が連なっていて、そう簡単でもないのですが。)

いずれにしても、そうした様々な刺激が、表層の意識が鎮まっている就寝中に、様々な形で発散させようとして起こっていることの一つとして、歯ぎしりや食いしばりがあると考えられます。

ですから、単純に言えば、歯ぎしりや食いしばりが激しい人は、そのストレスが強いということが言えます。

一説では、寝ている間に見る夢も、その刺激の解消の一環として起こっている現象だと言われています。
怖い夢、悪夢などを続けて見る場合はその刺激が大きい時であったり、発散活動が活発になっている時です。

つまりそれは解消のためですから、悪い夢を見たからといって怖がる必要はなく、むしろその分刺激が抜けた、と考えてもいいということになります。

食いしばりは身を守るためのもの、だけど…

そういう意味では、食いしばりや歯ぎしりは、その強い刺激を発散し、ストレスから精神を守るために行われている行為、というふうに捉えることもできます。

とはいえ、やはりその結果歯が削れてしまったり、顎関節症になってしまったり、またその他様々な症状の原因になってしまったのでは困ります。

よく頭痛、偏頭痛を起こす人も、食いしばりが強い人に多いです。

肩こり、首こりの原因にもなっていますし、よく寝違いを起こすという人にも多いです。

また、常に食いしばっているせいで、歯そのものが悪くなって虫歯になりやすかったり、歯周病口内炎などにもなりやすい傾向があります。
歯並びが悪い人も、かなり食いしばりが強い傾向がある人に多いです。

食いしばりに対する対策

では、その食いしばりをやめるためにはどうしたらいいでしょう?

実際のところ、これは大変難しく、やめようと思って簡単にやめられるものではありません。ほとんどが無意識にやっていることですから。

理屈だけで言ってしまえば、「ストレスを受けないようにする」「上手にストレスを発散する」ということになりますが、これも簡単にできることではありませんね。

あまりにそのストレスがひどい、そして食いしばりの影響が強く出ているという人は、環境を変えるというようなことも含め、そのストレス過剰な生活そのものを改善していくこと自体が重要になります。

人によってはカウンセリング等、外部に相談することも必要でしょう。

ですがそれらについては、ここで書くことのできる範疇を超えていますので、実際に普段できるセルフアプローチについて書いておきましょう。

眠る前にじゅうぶんに体をゆるめる

就寝前には、しっかりと体をリラックスさせておくことが重要です。特に首、肩の力を抜いておくことです。
もちろん全身のストレッチなども有効ですが、逆にあまり頑張りすぎないこと、特に激しめの運動はやめたほうがいいでしょう。

特に首の緊張と頭部、顎関節は強い繋がりがあります。
首をゆっくり回しておくとか、肩の脱力をしっかりしておくことなどは重要です。

あと、眠る前に目を疲れさせないということも実は重要で、目の疲れは脳の疲れを誘発しやすくなります。
スマホ、パソコンなど、目を刺激するようなことはできるだけ避けたほうがいいでしょう。

いつも首や後頭部が張っているという人は、温めたタオル(蒸しタオル)で後頭部をしばらく温めておくことをおすすめします。

顎関節をゆるめる

これは直接的な方法となります。顎関節そのものをゆるめておくことです。

方法としてはいくつかありますが、ゆっくりと大きめに口を開けて、閉じる、ということを数回繰り返すだけでも少し力が抜けます。

もっと簡単な方法としては、あくびをするということです。
あくびは意識してするものではないですが、慣れてくると大きな口を開けて「あくびをしよう」と意識するだけであくびが出ます。
眠くなる時にあくびが出るということ自体、顎関節をゆるめようという自然な体の反応なのかもしれませんね。

また、左右の顎関節(耳の下の少し前、口を開け閉めすると動く部分)の部分を指でマッサージしておくことも有効です。
指で押さえて顎を動かした時に痛みを感じる場合が多いです。

お腹をゆるめる

意外に思われるかもしれませんが、お腹をゆるめておくということはとても大切です。
お腹は感情の動きと強く関連していて、心が緊張状態にある時はお腹も全体的に硬くなっているのです。

そしてお腹が硬いということは呼吸も浅くなり、その結果眠りも浅くなる、というふうにつながります。

おへその周りを呼吸に合わせて静かに押さえてゆるめたり、また、特にみぞおちが硬いと精神的緊張がなかなか抜けないので、鳩尾を軽く押さえて息を吐き、ゆるめるようにしておくといいでしょう。

ちなみに、みぞおちがゆるむとあくびが出やすくなります。

(お腹の本格的なゆるめ方には少々技術が必要です。詳しく知りたい方は整体の時間に直接お尋ねください。)

就寝前に刺激を与えない、考え事をしない

眠る前にあまり刺激的な映画やドラマなどを見ないようにしましょう。

たとえフィクションであっても、その映像やストーリーから得たショックは刺激として脳に残ります。
小説やブログ記事などの文字媒体でも同じことです。

また同じように、眠る前に心配事、考え事をしないということも重要です。そうした考え事、悩み事をなるべく眠りの中に持ち込まないということです。

とはいっても、心配事は自然に湧いてきてしまうものですから、これは簡単なことではないと思います。
ですが、あえて考えてしまうのある人がとても多いです。
中には心配事をわざわざ探すかのようにして心配する癖のある人もいますが、癖というのは習慣によって変えられるものですから、その癖を自覚して、やめていくようにするということは大事です。

眠る前に心配したからといって、いい結果が出るというようなことは全くない、ということは認識しておくといいと思います。

おわりに

以上の通り、食いしばりというのは、かなり心理的な部分に起因しているものです。
しかも意識できない部分、潜在意識領域のことでもあるので、なかなか一筋縄ではいかないものではありますが、ここで書いたように、できることはいくつかあります。

そして、それら無意識にある原因を理解し、自覚すること、つまり意識に浮上させることにも大きな意味があります。

その上で、可能なアプローチを行っていき、必要以上の力を抜いていくようにする、ということを行っていきます。

さらに詳しいアプローチや調整については、福井自然体健康塾の整体をご活用ください。
その際に直接アドバイスをさせていただきます。

タイトルとURLをコピーしました