息(呼吸)と腹・心

体と心の話

食事は数日採らなくても生きていけますし、便秘が数日続いたところで命に別状はありませんが、呼吸となるとそうはいきません。

私達は24時間絶え間なく、息を吸ったり吐いたりしなければ生きていけない生き物です。

呼吸のほとんどが無意識のうちに行われているせいか、「呼吸」ということにはあまり注意が向けられないものですが、その呼吸のあり方が体や心に大きな影響を及ぼすのは当然といえるでしょう。

 

息が浅く、短くなれば身心共に不安定になります。

誰でも緊張している時は肩が上がり、胸でハアハアと浅い息をしているものです。

逆に落ち着いている時には、ゆったりとお腹で息をしているものです。

 

お腹で息をするといっても、実際は肺に息が出入りしているわけですから、本当ならば胸です。

しかしなぜ「腹で息をする」と言うのでしょう?何故「腹式呼吸」が大事だというのでしょうか?

 

それは、腹と胸の境目にある横隔膜の動きによるからです。

簡単に言えば、お腹が膨らむと同時に横隔膜が下がり、息が入ってくる、お腹が凹んで横隔膜が上がり、息が吐かれるという動きがなされています。

ということは、お腹の弾力が無いと、呼吸も浅くなってしまうわけです。

お腹の上部、鳩尾(みぞおち)という所は、精神的緊張を表す場所です。

ここが固くなると、自ずと横隔膜の動きも悪くなり、呼吸は浅くなります。当然気持ちも落ち着きません。

 

鳩尾の横、ろっ骨の下端のラインは感情の変動が現れる場所と言われていますが、ここも固く張ってくると息が浅くなります。

胸から上で浅い息を繰り返すことになり、必然的に肩・首・頭にも力が入ってきます。

こういう体で無理に深い息をしようとしたり、深呼吸をしてみても、場合によっては余計に肩に力を入れてしまう可能性もあるのです。

普段、鳩尾やお腹全体をゆるめておくことをお勧めする理由はこういうところにもあります。

 

呼吸は周りの人にも影響を与えます。

息が浅い人は、どうしてもソワソワした雰囲気を持ってしまうものです。

しゃべり方や体の動きに落ち着きが無いと感じることもありますが、黙って座っていても何故か落ち着かない、という場合もあります。

何故かはわからないけれど、電車や飛行機の中で隣に座った人が鬱陶しく感じることがありませんか?

私達は無意識のうちに、周囲の人の呼吸を感じているのです。

だからその場が「息苦しい」と感じたり、「息が詰まる」と言ったりするのですが、あまりにそういう雰囲気の影響を受けすぎる人は、自分自身の呼吸が乱されてしまっているわけです。

つまり自分自身の呼吸が浅い、ということが言えます。

 

自分自身が呼吸を無意識のうちに行っているように、周りの人も無意識のうちにその呼吸を感じ取っています。

深い呼吸が出来るようになると、自分の体や心だけでなく、周囲の環境まで変わるといいます。

深く落ち着いた呼吸が出来ていると、周りにいちいち左右されないようになります。

そして周りの人も、その落ち着いた雰囲気に何故か惹かれ始めるものです。

「いるだけで落ち着く人」というのは、きっと深い呼吸が出来る人なんでしょう。

 

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