整体と病気治療

体と心全般

「整体」に関して、よくいただく問い合わせに、「整体ではどんな病気が治りますか?」「どれくらいの期間で治りますか?」というものがあります。
この質問に対する答えは少々複雑です。

整体は本来「病気治療」をするものではないからです。
整体のルーツを辿ってみても、また、現実的に法律上の理由でも、整体は「治療法」ではないのです。

このことについて、今回は説明させて頂きたいと思います。

まず、整体の目的は、「本来その人の体があるべき姿」に戻していくことにあります。
そうすることで、結果的に病気も良くなっていくわけです。

どんな病気も、その人の体が、その人本来の姿でなくなってしまった時に起こります。そして、病気になることで、そのバランスを取り戻していく働きが起こります。

建物がバランスを崩して、片側に傾いたとしましょう。
そのせいで、壁や窓にヒビが入ってしまいました。
これが「病気」に当てはまります。

その壊れた窓枠や壁を修理するのが、いわゆる「病気治療」です。

整体の立場は、壊れた部分を見るのではなく、建物のバランスがなぜ崩れているのか、そして元々どのような形であったのかを推察し、元に戻していくように働きかけるものです。

ただ、建物と違い、人間の体には「自然治癒力」がありますから、少々事情は異なります。
建物の場合は、ひび割れた壁や窓ガラスが自然に元に戻っていくことも、ましてや傾きが自然に直っていくこともありません。

しかし人間の体の場合、バランスが崩れ、病気の症状や痛みが出ることによって、脳が「バランス回復指令」を出すようになっています。
病気・痛みがあるおかげで崩れたバランスを取り戻そうという働きが起こるわけです。
ですから本当は、その病気・症状は「必要性があるもの」ということになります。

つまり、すぐにその症状だけを治してしまうことは、バランス回復を妨げることにもつながってしまうわけです。
たとえば膝や腰が痛いからといって、痛みを止める薬を飲んだり、膝や腰だけの部分的な矯正をしたりしても、また痛みを繰り返します。

それは、表面的な治療をしているせいで、根本的なバランスが整っていないからです。

そして、その痛みは繰り返すうちにひどくなる場合が多いです。
ますますバランスが崩れていっているのに、部分的補修ばかり繰り返しているからです。

血圧が高いからといって、下げる薬ばかりを飲んでいても、一向によくならないのも同じような理由です。
それどころか、ますます薬の量を増やさなければ対処できなくなってしまいます。

ともかく、整体というのは、病気の治し方を研究したものではなくて、その人の体、そして心の力が充分に働くための知識や技術の集大成です。
「血圧を下げる方法」とか、「神経痛に効く技」というようなものではないんです。

強いて言うならば、体そのものを整えた結果、高血圧や神経痛も「治ってしまう」ものなのです。

その体のバランスの崩れが、長年の歴史を持ったものならば、それを正しく整えるには、同じように長年の整体との付き合いも必要でしょう。

もちろん、表面的な病気や痛みが「治ってしまう」のには、さほど時間がかからない場合も多いですが、根本的なバランス回復、そして維持のためには、定期的に、じっくりとお付き合いをして頂いたほうがいいでしょう。

なお、法律上、「○○病を治す」とか、「腰痛・肩こり治療」とか、「□□治療院」という表現を用いることができるのは、医師、鍼灸・指圧・按摩・マッサージ師の国家資格を持っている人に限られています。

整体はこれらに当てはまりません。

かつて、整体法の創始者は整体の目的を「体育」「潜在意識教育」等と称していたそうですが、法的な理由はともかく、整体は表面の病気治しではなくて、まさに健康な体や心を育むためのものだと、当塾でも考えています。

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