病の役割~花粉症

体と心の話

春は誕生の季節。草木が芽吹き、虫たちは土の中から動き出します。

こうした自然の流れは、私達の体の中でも起こっています。

冬の間引き締まっていた体がゆるみ、動き始める季節です。

 

春には進学、就職、転勤などにより生活環境が大きく変わることがありますが、同じように私達の体内環境も大きく変化します。

そして変化の時、始まりの時は最もエネルギーを必要とします。

自転車も最初の一こぎが一番力が要るし、車もロー・ギアで最も動力を必要とします。

 

 

このような大事な時期である春に、一部の人には厄介な問題が訪れます。

花粉症のことです。

しかし、この時期にこの厄介な問題が訪れるのも偶然ではありません。

「杉花粉が飛び散る季節なんだから、偶然じゃないのは当たり前だろう」なんていう反論も聞こえて来そうですが、当たり前のように飛び散っている花粉に、しかもわざわざこの大事な時期に過剰に反応することの意味を考えてみたいのです。

 

クシャミや鼻水は一月から出始めています。

その頃、まだ杉花粉は飛んでいないはずです。

 

この時期というのは、既に春の体への変化が始まっている時期なのです。

主に後頭部や肩胛骨に変化が現れています。

面白いことに、これらの部位を刺激するような整体、体操などを始めた途端にクシャミが止まらなくなることがあります。

そしてクシャミが出終わると、詰まっていた鼻がムズムズし始め、鼻水が出てきます。そうすると肩や頭の緊張がほぐれてくるのです。

 

つまり、頭や肩胛骨等への刺激をきっかけに、体をゆるませようという勢いが内部に起こり、クシャミや鼻水として出てくるのです。

体が敏感な人は、わざわざ刺激を与えなくても勝手にクシャミを始めるし、もっと敏感な人はクシャミなどしなくても自然にゆるみ始めます。

 

こうして上の方の緊張がほぐれると、土台の骨盤の動きも本格化してきます。

春からはその骨盤の動きに伴って腰に弾力が出てきます。

その弾力は背骨を上昇し、腰の反りから腹、胸を開くように連動してきます。

ところが途中にゆるんでいない所があると、そこで引っかかるように様々な症状を起こし始めるのです。

 

春にはその後の温暖な季節に向けて内臓も活発に動き始めます。

下痢も起こりがちですが、これは頭の緊張を取ると同時に、皮膚のリフレッシュや皮下脂肪を捨てるため、色々な意味があるのですが、その元には肝臓の働きがあります。

暖かい季節に向けて、肝臓の仕事は増えてくるものですが、その準備でもあるでしょう。

 

内臓の疲れを溜め込んだ人は、春の変化がその疲れに“引っかかり”を起こします。

春になると心臓や脳の問題で倒れる人も多いそうですが、こうした大きな問題に発展しないためにも、体は花粉症という手段で硬直をゆるめようとしてくれている訳です。

 

ただ、体が鈍くなりすぎて花粉症にさえなれない人もいますから、「花粉症にならないから大丈夫」などと呑気なことも言っていられませんが…。

 

そういう人が何らかの方法で体を整え始めると、急に激しい花粉症が始まることもあります。

症状は辛いものですが、それによって体内の環境を変えようという動きが出てきた証拠です。

今までのツケを払うつもりで、しっかりと症状を出し切るしかありません。

 

こうした原因で起こる症状には、どうやら花粉そのものは直接関係がなさそうです。

だから、マスクも無効です。

 

ただ、本物のアレルギー症状を持つ人も、実は似たような体の硬直を持っています。

大きく体が動く春の時期に、花粉に含まれるアレルゲンの力を借りて硬直を取っていくことも必要でしょう。

 

一番困るのは心理的・被暗示的な花粉症で、花粉情報が流れる度に鼻がムズムズしてくる人です。

花粉症の役割を知らないとこういうことが起きてしまいます。

いずれにしても、花粉を異常に恐がったり、帰宅した家族や来客者の衣服に付着した花粉を敵視する前に、自身の体を見つめ直して改善に努めることに意識を向けてみるのも大事なのではないでしょうか。

 

ギアに異常があると車は走り出せませんし、最初の一こぎに力が足りないと自転車は走る前に倒れてしまいます。

春という動き始めの時期だからこそ、体はその環境を整えるため、様々な手段を講じてくれているのではないでしょうか。

その代表的なものが花粉症であるとも考えられるのです。

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